「杏里、俺やっぱり杏里が好きだよ」

「…皐月」



 もうここが家、と指さした杏里に繋がらない会話を持ち出してしまった俺。






 切なそうな顔で小さく頷いた。






「…ごめんね。やっぱり私にはどっちも勿体ないの。どっちもっていうか、琉にはフラれちゃったんだけど」




 琉は俺と杏里のためを思って別れたんだ。






 それを知らない杏里にはただの悲しい出来事として記憶に残っているんだろう。






「杏里、勿体ないとかじゃなくて。杏里が俺の事を呆れてないなら…付き合ってほしい。もう一度チャンスをくれない?」

「呆れてなんか…」



 俺が大人げないばかりに杏里の気持ちを踏みにじったのは本当のことだ。





 だけどな、本心じゃなかった。





 それだけは信じてほしい。