溺愛男子



「杏里にも俺が好きなオレンジジュースしか飲ませてなかったからさ…」

「…あいつの事情知ってんだろ?」

「まぁ…親父さんのことだろ? 家に連絡なしに遊びに行ったら杏里が蹴られててビビった。何も見なかったふりして帰ったけど」




 …帰った?




 やっぱりこいつは杏のこと好きじゃねぇのか?





「なぁ、なんでここに来たんだよ」

「杏里を迎えに」

「杏里が好き?」

「あぁ」

「……そっか」



 なんだ、両思いなんじゃん。





 俺が邪魔してたってわけか。





 無理な手錠を杏にかけて、繋ぎとめて邪魔してたんだ。





「…あ、名前聞いてなかったよな」

「…西野琉」

「琉か―。俺、皐月」

「ん…」



 知ってる。





 杏からお前の存在を聞いてたなんて言わないけど。