「…いい、よ……」 杏から返ってきた言葉は望んでいたものじゃない。 そんなことわかってるのに、笑顔で頷く俺はバカだ。 そっとポケットの中から手を出して、温かくなった杏の手を名残惜しく解放する。 あ―――…ヤバい。 涙線が緩む。 「…皐月に幸せにしてもらえよ」 「……琉もいい人見つけてね…?」 杏以上にいい女なんていると思えない。 「私、ずるいでしょ。琉のこと大好きなのに、皐月に目行っちゃって…」 「俺も繋ぎとめたかった」 あんまり話すと別れがつらい。