「杏ー、行くぞ」

「はーい」


 鞄に弁当を突っ込んでいた杏を呼んで家に鍵をかけた。




 外に出ると昨日のような大雨じゃないけど、どんよりした雲にいつ降りだしてもおかしくない天気だ。




 杏の手を掴んで俺の上着のポケットに一緒に手を入れた。





「寒くない?」

「…大丈夫だよ」



 昨日から杏は俺を見てない感じがする。




 ほら、昨日までは俺のほうをたまに見ながら歩いてただろ?



 今はどこ見てんの。





「杏」

「なぁに?」




 呼んでもこっちを見ずに返事。





 なんで下見てんの。