溺愛男子

 *杏里side*




 まさか皐月がここまで来るなんて思わなかった。




 足が震えて動けなくて、涙があふれ出す。





 懐かしい私を呼ぶ声も、あの苦しそうな笑顔も、何一つ変わってない顔も。





 本当は愛しかったのに。





 その愛しさを否定された時の痛みが激しくて、皐月を受け入れない。





「大丈夫か?」




 隣にいる今、大切な人は心配そうに私に温かいココアを淹れてくれた。





 きっと琉も気付いてる。





 私が皐月を何より愛してたこと。