前髪をあげてセットしてあった髪は全部降りてしまった。




 杏が持っていた櫛で綺麗に梳いてくれた。




「下ろしてる琉もカッコいいよー」

「変わんねぇだろ…」

「上げてるとチャラい」

「なんだそれ(笑)」




 やむ気配のない雨空を見ながら杏と話した。




 雨音は静かで落ち着く。





「杏、寒くない?」

「んー…大丈夫」

「嘘つけ。さっきまで手擦ってたくせに」



 もう冬だぜ?




 こんなに濡れて寒くないわけないだろ?



 俺より髪も長いし、体温は十分に奪われて。




「こっちおいで?」

「ん…」



 素直に寄ってきた杏を座って抱きしめた。




 予想より冷たくて、我慢してたことがよく分かる。