足をがくがくとさせた杏は、俺の袖を引っ張って訴える。
「ん、分かった」
だけど、これじゃ杏が歩けない。
俺は急いで杏を抱き上げてさっき来た道を戻る。
「杏里っ!!!」
後ろにいる男が大きな声で杏を呼ぶけど、無視して走った。
少し離れた公園に着いた俺らはベンチに座る。
「あー…久しぶりに走った」
「ごめんね…」
「いいけど。大丈夫か?」
顔を青くして俯いたまま、俺に体重を預けてくる杏。
「あれ、誰か聞いてもいい?」
「前に話したよね…? 元カレだよ」
たしか杏の体目当ての男―――。
なんで今さら出てきたわけ?
やっと杏が落ち着いてきたのに。