「着替えて」


 杏から制服の代わりにブランケットを奪い取ってベッドから引っ張り下ろす。




 だけど、こんな状況を楽しんでる俺もいる。




 眠そうな杏に愛しさを感じてぎゅっと抱きしめたくなるのも我慢。




「着替えるからぁ…」

「はいはい。マジで遅刻するぞ」




 隣の部屋に入って杏の荷物を鞄に詰め込む。




 だいぶ物が増えてきた杏の部屋は散らかってるわけでも片付いてるわけでもない。




 生活感のある部屋って感じ。




「着替えた―??」

「うんー!」




 部屋に戻って制服になった杏を引っ張ってマンションから出た。




 こんなこともあろうかと、母さんに作ってもらったおにぎりを杏に渡しながら走った。





「わぁ、莉子さんのおにぎり―♪」


 リュックの杏は嬉しそうに荷物を揺らしながら器用に食べ始める。




 走りながら食えるんだ…。