溺愛男子



 俺が立ち上がると行くなとでも言うように目を覚まして勢いよく起き上がった杏。




「…琉ッ」



 杏が泣きながらこっちを見る。





 …俺は何も考えずにもう一度杏の傍に座った。





「…どうした?」

「…どこか行っちゃうの?」

「え?」



 寝ているときより不安そうな杏は俺の服の袖を掴んだ。




「どこにも行かないで?」



 そりゃ、俺だって離れたくねぇよ。




 杏の傍にいれるなら一生いたい。




「…ねぇ、私が家に戻ってきたのは夢? これも夢? 琉が離れて行きそうな感じするのも夢かな」




 俺の肩に頭を預けて小さな声で言う。





 …よっぽど不安だったんだろう。