溺愛男子




「あ、外すの忘れてたね」




 おじいちゃんは苦笑いをした後、私の手首を縛っていた紐を解いて琉も同じようにした。






 琉は一度もこっちを見ようとしない。






「私はあの男のところに行ってくるから。琉君、杏里ちゃんを頼んだよ」

「…はい」




 おじいちゃんが行った後も琉は黙ったまま。





 琉のは道端に座って空を見上げる。





 私はその隣に座り、琉を見る。






「…琉?」

「…俺、めっちゃかっこわりぃ……」

「え?」

「杏のために覚悟決めたのに、理事長ときたら簡単に助けて…俺の立場が…」




 琉はそんなこと考えてたの?





 そんなの、どうでもいいじゃない。