恐ろしいくらいの笑みを浮かべると俺を引っ張って杏を押しのける。




 ガムテープを外された杏は必死に俺の名前を呼ぶ。





「りゅ、琉!!」

「…大丈夫だから」

「大丈夫じゃないよ!! 私とあの人の問題なのに琉が苦しまなきゃいけないなんておかしいよ!!」

「杏は十分もう苦しんだから。俺が助けてやる番」




 後ろで繋がれる両手に抵抗することなく、杏に笑顔を向ける。




 赤い目をさらに赤くしたいのかまた泣きだす杏。




「借金返したら帰ってくるし。杏、待ってろなんか言わないから幸せになれよ?」

「そんなこと言わないでよ!! 冗談は終わりにしよう?」

「冗談じゃねぇよ。俺はマジで杏に幸せになってほしい」




 俺の誓いは叶えることが出来たんだぜ?




 俺が杏を幸せにするって。





 そのきっかけを作ったのは俺。




 それくらいでいいから、これからも俺の事を頭の隅の方にでも置いておいて。




「…ヤダよ!! おじさん、琉を返して!! 私が働くから!!」

「もう取り消さないよ」

「待ってよ!」

「むーり」