俺に気を遣ってか、信号が変わると近くの道端に車を止めてくれた。
「最後のお別れをさせてやるよ」
「……最後?」
「この女はこれから遠くの地方に飛ばして働いてもらうからね」
車の中から出てきた杏はよろよろしてて、泣いたのか目も赤い。
「杏ッ……」
ドンっと背中を押された杏を受け止める様に抱きしめると半端じゃないほど震えていて俺を抱きしめ返そうとしてくれるけど、上手く出来ないみたいだ。
「ごめんな? 怖かったよな…」
ガムテープを貼られている杏の声は聞こえない。
聞こえるのは杏の心臓の音。
背中をさすると力なく目を細める。
「…なぁ、俺がさ…杏の借金肩代わりする」
「!?」
杏は驚いたように俺の腕を引っ張る。
「へぇ…?」
「だから、杏は解放してくれ」
「代わりに君を連れて行くってことかい?」
「そうだ」
「……いい度胸してるね。いいよ、君が望むならそうしてあげようじゃないか。男のほうが働く場所も多いしね」
