『杏里ちゃんが拉致された!?』
「はい…すいません!! 俺がちゃんと…」
『…君はよくやってくれたよ。いつかは来る予定だったんだ』
さっきまでの嬉しそうな声ではなく、どこか落ち着いた優しい声。
きっと俺の気持ちも察してくれてる。
「そこでなんですが、杏の元住所を教えて頂けませんか?」
『いいが…危険だ。今、そこに住んでいるかもわからないんだぞ?』
「少しでも確率があるなら…」
俺はそれに賭ける。
杏を必ず幸せにするって誓ったんだ。
そんな男のところじゃ幸せになれない。
理事長に住所を教えてもらって電話を切った。
今から行くとたぶん母さんも心配するだろう。
今からでも飛んでいきたいが、昨日も家に帰ってねぇしさすがに帰らないとヤバい。

