残ってるのは、杏との思い出と杏の鞄だけ。




「ちょ…マジで杏返して…」



 既に出ていた出口からとぼとぼと歩く。





 来た道はあんなに早かったのに帰りはすげぇ長い。







 杏の鞄の中にはケータイも財布も全部入ってる。




 俺とおそろいのケータイも今はただの思い出の品。





「…にしたくねぇよ…」




 思い出なんかにしたくない。




 やっと俺の女になったのに。




 少しの期待で杏のスケジュール帳を開いてみる。






「……ビンゴ」





 スゲジュール帳の最後のページに挟まれていた写真1枚。




 杏の母親だろうか。





「綺麗な人だな」