溺愛男子



 少し静かな雰囲気になって俺は外の景色を眺める。


「ねぇ、琉…」



 沈黙を破ったのは珍しく杏で、夕暮れの空が見える窓に杏の影も映る。




「ん?」

「琉とはさ、こっちに逃げてこなかったら会えてなかったんだろうね」



 急にそんな話をするから俺も少し驚いて杏の方に振り返る。





 思った以上に悲しい顔をしてる杏。




「何いってんの? ………逃げてこなくても、絶対俺が見つけてたし」

「そう、かな…」

「杏がこんなに追い詰められてるときに言うことじゃねぇかもだけどさ」





 少しずつ少しずつ俺の脈拍と共に観覧車が頂上に近づいて行く。




 隣に座って杏の目を見るとたぶんこれから俺の発する言葉なんて想像もしてないような目。




「…ん?」

「俺………の好きな奴知ってる?」




 うっわぁ…俺、何いってんの。




 情けねぇ…。