俺が睨みを利かせると面倒くさくなったのか、舌打ちをして去って行った。
「数分でからまれるんだな…あぶなっかしい…」
「ごめんね…」
「ん、気にすんな~。はい、オレンジジュース」
再びベンチに座らせてさっき買ってきたオレンジジュースを渡した。
「ありがとー」
嬉しそうにオレンジジュースを受け取るとキャップを開けようとする。
「…バカ、貸せ」
たぶん表には出してないけど、怖かったんだろう。
手が震えてて力が入らないみたいだ。
キャップを開けて杏に渡すと気まずそうに笑う。
「…知らない男の人が怖いの」
小さな声でそう言った。
そりゃそうだろう。
ストーカーには散々な目にあわされるし。
黒尽くめには拉致されそうになるし。

