やっと出口が見えたころには杏も声がからから。
俺は耳が痛い。
「飲み物買ってくるからここで待ってて」
「ありがと…」
近くのベンチに杏を座らせて自販機にコーヒーとオレンジジュースを買いに走った。
本当に急いだつもりだったんだけど、手遅れ。
「あー…バカ」
見事に絡まれてる杏は困った顔で掴まれてる腕を離そうと頑張ってる。
あ、ヤバいな。
泣きそうな杏に少しだけ焦って駆け寄った。
「おい」
「…なんだてめぇ…」
「そいつ、返してくんない?」
ん、と手を差し出すけどニタニタと笑って返してくれそうにない。
触ってんじゃねぇ―よ。
「琉…」
「なぁ、その子俺の女だから、返して?」

