「じゃあ友達の君に頼みがあるんだ」
案外冷静な男はサングラスで顔なんて全くわかんねぇけど話だす。
「杏様のご家族がお待ちなんです」
「……家族?」
杏から家族の話は聞いたことがない。
一瞬、引きそうになったが…普通こんな黒尽くめ野郎に迎えに来させないだろう。
それに杏が震えてるのは事実だ。
男の手を杏から離して俺の後ろに移動させる。
「杏、震えてるんだけど」
「何に怖がっているのでしょうかね?」
「杏? 先に家に帰ってろ…」
俺が杏の頭を撫でながらそういうと小さく頷く。
「ごめんね? 絶対、ケガしないで…」
「わかってるから。つーか、暴力振る気ないし」
杏が夜道に消えて行くのを見てから男に視線を戻す。