「琉、苦しいよ」

「震え止めてるんだから仕方ねぇだろ」



 嘘。



 俺がきつく抱きしめたいから。



「琉、大きいね」

「当り前だろ、男だし」

「あれ、お姉ちゃんじゃないの?」



 クスッと笑う杏。




「うるせー。それより抱きしめられて笑っていれたんだ?」

「…うん。なんか安心する―」



 うわ…、さっきのはキューってなった。



「俺、男なのに安心できた?」

「もともとしてるよ」

「してなかったんだよ! 震えてたし」

「今は震えてないでしょ」




 ほんの少し力を抜いても震えない杏。




 マジで……?




「杏、克服?」

「琉だけだよ。もともと信頼してたし」




 それでも…俺には。



 十分過ぎた。




 むしろ俺以外の男は全部避けろ。



 払い飛ばせ。