「よし、目を開けてみろ」

「…ん」



 そっと本当に少しずつ開かれていく杏の大きな目。



 涙をほんのちょっと溜めている。




「震える?」

「…ちょっと」

「俺怖い?」

「怖くないよ。琉は優しいもん」




 俺が優しいのは杏にだけなんだけどな。




 笑うと頬を伝って行く杏の涙を拭う。




「あれ、ビクッとしなかったな」

「…本当?」

「おう」




 今日着て行く予定だったであろう杏の珍しいスカート姿に笑顔が良く似合った。




「…抱きしめてもいい?」

「…うわ、ちょっと怖い」

「あくまで克服作戦だからな?」




 なんて自分にも言い聞かせる。




 そっと杏の小さな背中に腕を回す。




 震えも抑え込む勢いで。





「琉、あったかいね」

「俺はあっついです」