溺愛男子


 にっこり笑う杏。


「冗談だよ~」

「キツイ冗談だな」



 思ってもないことを言わなきゃ心臓が持ちそうにない。



 可愛いこと言ってくれちゃって、俺は死にそうです。





「琉のバカっ」

「はいはい、俺もう帰るから!」



 なんだか恥ずかしくなって急いで杏の家を出た。



 情けねぇ……。




 外は真っ暗だったけど目の前にある家。



 何の支障もねぇな。


 玄関に入ると丁度母さんが風呂上がりのようで廊下を歩いていた。



「琉、夕食は?」

「食ってきた」

「杏ちゃんの手作り!?」

「あぁ…」

「私も食べたかったぁぁぁ…」



 母さんは残念そうにリビングに戻って行った。