杏は久しぶりの外出で疲れたのか眠たい様子。




「…杏」

「ん~?」

「今さらなんだよって感じだけどさ」

「うん」

「俺、頼っていいんだからな?」

「…うん」


 曖昧な返事しか返さない杏は眠いのか返事をしたくないのか。




「杏、わかってんの? 杏が嫌な目にあったら俺は悲しいし、守ってやりたい。杏に頼られないと情けねぇ男でしかなくなるんだけど」



 杏をちらっと見ると目が合った。



 そっと杏に手を近づけると肩を上げたけど、気にせずに伸ばす。




 ポンっと頭に手を置くと柔らかい杏の髪の感触がある。



「頼って」

「…ありがと」




 久しぶりに触れた杏は冷たかった。



 抱きしめたくなるのを押さえて杏を家に送る。




「じゃーな」

「うん、わざわざありがと…」

「マジで頼っていいんだからな? 連絡しろよ?」

「はいはい(笑)」




 杏の自然な笑顔が見れた。



 家の中に入って行くのを見送った後、来た道を戻る。



 この時間が一番嫌いだ。