溺愛男子



 震えてるどころじゃない体は止まることを知らないようだ。




 病室の扉を上げた工藤さんは廊下を歩いて行く。




「…やめて…離して…」

「こんなに震えちゃって可哀相に」

「お願い…病室に戻って…」

「俺は杏里がいないと生きていけないよ? 俺を殺す気なの?」





 悲しそうな顔をする工藤さんに必死にお願いする。




 涙が溢れ、しゃくり上げて呼吸が上手くできない。




「ひっ…く…」




 エレベーターに乗るのか、ボタンを押して立ち止った工藤さん。




 誰か…助けて……。





 どうしてこんなことまでするの……?




 私、工藤さんに何かした…?




「ずっと一緒だからね」




 さっきから何度も同じことをいう工藤さん。




 満面の笑顔で言う工藤さんに常識はないのだろうか。