「あんな男をしょっちゅう家にいれちゃだめでしょ?」
「……」
笑顔も私の中では恐怖にしかならない。
カタカタと震える肩を両腕で押えて一歩ずつ退く。
「もしかして…家に入った…?」
「当り前でしょ? そうしなきゃカメラも設置できないじゃないか」
「どうやって入ったの…?」
「杏里を初めて見た時…一目ぼれだったよ! そしたら杏里のズボンから鍵が半分見えてたから取ったんだ」
平然とした顔で言う工藤さん。
それ…犯罪になるんだよ。
初日、鍵がなくなったのはこの人が盗ったから。
人間って本当に怖いとき案外冷静になれるんだ。
震える肩を無視すれば考えはまとまる。
――――ガチャッ ガチャッ!!!
扉の向こうでドアノブを回す音が聞こえる。
「りゅ、琉…!」
「あー…あの男か。鍵かけておいて正解だったね」
「なんてことするの…」
「杏里にあんな男はふさわしくないよ」