「杏里~」
「…お仕事中なんで」
「そんな悲しいこと言わないでよ! 金が必要なら俺があげるよ?」
毎日来るこの人。
……工藤聡志。
いつの間にか「杏里」って呼ばれてて違和感を感じる。
「お金の無駄にする人は嫌いです」
「杏里が使ってくれるなら無駄じゃないよ」
「あなたのお金でしょう?」
「俺の金は杏里の金だよ」
私の横に来て話し続ける工藤さんは嬉しそうに私の髪を触る。
鬱陶しいけど、こんなところで争ったらお店にも迷惑がかかる。
「仕事終わるまで待ってるね」
にこりと笑った工藤さんは琉とは違うコーヒーを買って出て行った。
やっと行ってくれた…。
申し訳ないなと思いながら店長に謝る。
「…いいんだけどさ、杏里ちゃんこそ大丈夫? 最近悪化してない?」
「私は大丈夫です!」
バイト先まで心配はかけられない。

