杏里は俺の腕を引っ張って、女たちから離そうとする。
だけど、俺はすでに限界を超えていて…怒鳴らずによく耐えた。
「いい子ぶりやがって」
集団の後ろの方でぼそっと聞こえた声。
誰のどこがいい子ぶり?
「…おい、お前らいい加減にしろよ?」
「えぇ? 琉君のためを思って~…」
「俺のためだと思うならもう話しかけるな、視界に入るな!杏里に構うな!!」
大きな声で言うと肩をビクつかせた女たち。
これくらいで許せない。
今気付いたばかりだけど、好きな奴のことを悪く言われて嬉しい奴はいないだろう。
こんな風に言われたら誰でもキレる。
「琉君…。どうして…」
「何がだよ」
「そんな女のどこが…いいの」
「まだいうわけ? ホント許さねぇぞ」