小さな病院の一室…。



「…おばあちゃ…!!!」


 弱弱しくなったおばあちゃんは私のほうに手を伸ばしてくる。



 近くには数人のお世話になっている医師が立っている。




「…杏……これ…」



 私に伸びていた手は反対側にある小さな引き出しの中に行き、中から1枚の書類をだした。



「…手続きしておいたから……引っ越しなさい…」

「え…?」

「必要なことはそこに…」



 おばあちゃんの眠たそうな目からは涙があふれていて…、私はそれなりの覚悟をした。







 小さく震えているおばあちゃんの手から書類を受け取る。




「…杏、あなたはあんなことろにいちゃダメ…。見つからないうちに…逃げなさ…」




 にっこりとほほ笑んだおばあちゃんは数分後に動かなくなった。




「…おばあちゃん……」





 唯一、私の味方をしてくれていたおばあちゃん。





 泣けないハズがなかった。