正月が近づいたある日のこと

弁護士の田中さんがやってきた。

「小野崎氏が帰ってきます。」

私と光は顔を見合わせた。


「マジ?かあさんは?」

「一緒ですよ。信之介さんを連れていくそうです。」


てくてくと歩く信之介を見ながら
私と光は沈黙した。


「信之介さんも一歳になりますから。
それにお二人も 進路とかいろいろありますからね。
小野崎氏も 腰をすえてフランスに
しばらく住むようですから 信之介さんを迎えて
三人で生活を始めることにしたようです。」


「そうなんだ…。おまえとうとう行っちゃうんだ。」

何もしらない信之介はおもちゃを振りまわしている。

「それにしても大変な時期をよく
子育て頑張りましたね。尊敬しますよ。
大野さんも褒めてましたよ。
お二人とも信之介さんのお世話を真剣にしてるって。」

「こいつの親が迎えに来るまでは
俺と琴子が親代わりだから……。」


信之介を挟んでスタートした家族ごっこが
終わろうとしてる そんな気がした。

そしてまだ見ぬ父親との再会
大好きな光の母親にも会うんだって思うと
緊張してきた。