あのころに戻りたい。
もう一回『妃』って呼んでよ…
「おい。」
ほら呼ばない…。
「聞いてんのかお前。」
「…あたしは……。」
やばい、涙…。
あたしは思い切り
祐くんの手を振り払った。
「妃奈だよ…。祐くんの…たった一人の幼なじみなんだよ!!!!!!」
思い出してよ…祐くん。
「…そんな昔のこと、わすれた」
「へ…?」
「いまはただの『お向かいさん』。だろ?」
堪えていた涙が
一粒ずつ流れ落ちて、
制服を濡らしていく。
「あたしは……一度も…ただのお向かいさんだなんて、思ったこと無いもん!!!!」
こんな号泣の顔
見せたくないのに…。
祐くんの前では
いつでも笑ってようって
決めたのに…。
耐えきれなくなって
家に飛び込んで、
自分部屋に閉じこもった。