向こうから祐くんの声がして
あたしは我に返り
あたしの鞄を
彼に持たせていることに気がついた。
「ごめんね祐くんっ!」
謝りながら
急いで祐くんの元に向かった。
「遅い。」
その言葉を聞いて、
もう一度心の内で
ごめんなさいと謝った。
「あの…鞄…」
軽々しく担いでるようにみえる
あたしの鞄。
だけど中身は
パンパンに膨れるくらい詰まっている。
テスト前だし
昨日いっぱい持って帰ったんだよね…
「いいから行く。」
「は、い…」
階段をスタスタあがっていく祐くんに、
情けない返事しかできなくなる。
命令口調なのに
やっぱり優しい…
昔とは全く違う背中を
後ろから眺めているだけで
心臓の奥がキュウっと
締め付けられる。
留美ちゃん。
あたしも、祐くんが好きだよ。



