お兄ちゃんは
真剣な目であたしを見たかと思うと
すぐに
ふにゃあ。と口角をあげて
笑った。
「素直になって、泣いていいんだよ妃奈。」
───昔からそうだった。
お兄ちゃんは。
お母さんとお父さんが
離婚するときも…。
─────────
あたしはまだ
小5だったかな。
高校生のお兄ちゃんは
お父さんが女の人を連れて
出て行ったあと
ニコニコ
作り笑いで過ごしているあたしに
言ったの。
『寂しければ、悲しかったら。ちゃんと泣けばいい。兄ちゃんがいるから。』
そうやって
頭を撫でてくれた。
─────────
今だって。
「ほら。おいで。」
「お兄ちゃ………ふぇぇえ」
フラフラする体で
あたしは
お兄ちゃんの胸に飛び込んだ。
「いい子いい子。」
そうしたらお兄ちゃんは、
成長したあたしの体を
ぎゅっと抱き締めてくれた。



