「で、僕は何かするんだよね。」

エリカの話を一通りした後、僕は二人に聞いた。

「エリカさんって人とは、結局、神保町の古本屋で出会い、なぜかこういう関係に落ち着いていて、で、エリカさんは神保町の小さい出版社で働いている、綺麗なおねえさんってことだよな。」

「そうそう。」僕は頷いた。

「多分それは・・・ただの友達よね。」

「俺もそう思う。」

「じゃいいんじゃない。とにかく、土曜は必ず来て。今回だけはエリカさんの誘いも断って。土曜に駅の西口で待ってるから。ね。」

「んー、わかった。仕方ないね、なんだかわからないけど。」

「あー、よかった。」二人が喜びあっている。

「なんで、二人とも喜んでるわけ?僕にかなり不利な何かなの?」

「え?そんな事・・ないわよ。ね?雄介。むしろいいことかも。」

「そう思うぜ。じゃ、俺、次、物理だから。」雄介がわざとらしく走っていった。

「かおり・・ちゃん?」不意に名前を呼ばれたせいか、かおりが固まった。

「な、なに?」笑顔がぎこちない。

「何かだけ・・・土曜さ、何があるのかだけ教えて。」

「土曜になってからでいい?尚くん・・あ、ごめん名前でよんじゃった。」
「かまわないよ、尚って呼んで。」

「う、うん。尚くんに迷惑かけないから。ちょっとだけ、あたし達につきあって。ごめんね。でも、きっと、雄介より尚くんのほうがいいと思うの。尚くんってやさしいし、かっこいいし、足速いし・・・頭いいし。そのくせ、女癖悪くなさそうだし・・・。」

「褒められてるけど、微妙に嬉しくないな。かおりちゃんのさ・・ま、いいや。わかったよ。土曜ね。何時?」

困ったようなかおりの顔をみていたら、今回だけはまぁいいかと思えてきた。

「10時。よろしくね。」鐘がなった。

僕達は廊下で別れた。