「苦手っていうより、なんか裏がありそうで嫌いなのよ」



「き、嫌い……ですか?」



「そう。嫌い」



勘のするどい智香のことだ。



きっと何か気に障ることがあったんだうけど……



「でも飯田先生、優しいよ」



「はぁ―……まだまだね。未来は」



ま、まだまだですか……?



「あの綺麗な姿は一種の罠よ。バラには鋭い棘があるんだから」



「罠……」



「そう、それに何か怪しいのよね……。今日だって、未来の家の近くに……」



「え?家?」



「あっ、うぅん。なんでもない。とにかく、あいつには気を付けておきなってこと」



「う、うん……」



智香の迫力に押されてつい頷いてしまったけど……



あたしはこの時、本当の意味で智香の言ったことを理解してなかった。




綺麗なバラの甘い香りに惑わされて……




もうすでに、危険な罠を仕掛けられ始めているということに―……