「オマエ。綺麗な顔してんな」

私の体は強制的に男の方へ向けられた。

「は??」

予想外な男の言動に唖然とする。

男は愉しそうにクックッと喉を鳴らして笑った。

何なんだ、この男は…

「作って。花束」

「はい。どのような、感じに致しますか?」

こうなったら、さっさと終わらせてしまおう。

私は自然な笑顔を心掛け、男に視線を合わせた。

「2つ作ってくれ…ひとつは黄色だ。もうひとつは…」

男の大きめな手が、私の髪を優しく撫でた。

「…赤だ」

私は不覚にもドキドキしてしまった。

この男、美形だ。

そんな、男に髪を撫でられるなんて。

「分かりました」

「30分後に取りに来る」

そう言って男は引き返した。

その時。

苦い煙草の香りが、香った気がした。