おとり化粧室


いいや、君は別に意地悪じゃない。

ルルナぐらいには自分の気持ちを隠したくなかっただけで、

澪碧嶺の性格パターンを親友ならルルナも把握しておくべきだと働きかけたまでで、

君がビッチな訳ではない。


ルルナにチクった君を陰口ガールだと否定するなら、

それはソイツが世間知らずなだけで、ここは大人になってそんなガキはほっといてやろう。

ちなみに、こんな具合のブラックジョークをゆるく聞き流せない方が、

最近の高校生はやっていきにくいんだとか。

真面目や正義、誠実や素直、小学生で褒められた素敵呪文は、

中学生の頃から次第に通用しなくなり、皆はひねくれちゃうんだ。


つまり、君は澪碧嶺を嫌いじゃないし、今後も仲良くツレをしていくつもりだ。



ルルナのお陰で心が軽くなる。


「でもあれだね、そこまでパクるとか不自然だからさ、案外澪碧嶺は無意識なのかもよ? 君チャンが可愛いから同じのが欲しいんじゃないかな?」

いいや、心が軽くなったのも束の間、

ルルナときたら微妙に澪碧嶺の肩を持った発言をしてきやがった。


「っ、でも」

さすがにその良い子チャンぶりっ子にカチンときて、言い返そうとしたんだけど、

やっぱりルルナは君より偉大みたいだ。


「私マネされたことないからちょっとよく分からないけど君チャンが嫌な気持ちなことは分かったから大丈夫だよ。

澪碧嶺があんまりにも続くみたいならね、今度なんとなく玲ちゃんにも探り入れてみるから。元気出してよ君チャン」


癒しの女神とは彼女を指す。


トイレのドアを開けたなら広がる廊下は一直線、

モヤモヤ負の感情は洗い流された。

午後の授業、君は誰よりも背筋を伸ばし黒板を見ていた。