おとり化粧室


君が通う学校の七夕祭り行事は、

一年がハンドベルを奏で、二年が事前に短冊やら笹やら飾り付け、三年が織姫彦星の劇を演じるしきたりなんだそう。


「毎年ハンドベル綺麗だよー? 私は一年の時したんだけどテレビも入って緊張したのーめちゃくちゃ地方臭なのにやっぱしカメラは緊張するね」


呉先輩がニコニコ昔を語ってて、

『すごーい』とか『うそー』とか、盛り上げるタイミングをうかがってた癖に、

上手く相槌が打てない君は、呉先輩の目線が完全に玲ちゃんのみに向かってるとネガティブ隠して一人前に結論付け、

可愛い後輩ポジション争いから逃げて、ううん、先に降参し、

玲ちゃんに譲っちゃってた。



よって、一秒後には親友の背中に視界を奪われる訳だ。

「私はミだったの」
「あ、やっぱりミですよね。ハンドベルはミですよね」

「ミは難しい分やりがいあるからねぇ」
「ですです、ソはあれですよね」

「あー、ソはねぇ」
「僅差でミですからね、ソは惜しいですね、来年ですかねえ」


ペチャクチャペチャクチャ、
このやりとりに面白さを求めたり、寒さに引いたりするのは違う。

中身カラッポ、このやりとりこそが青春の証、

ノリとテンポが特技な女子高生らしく、二人だけが愉快に会話を重ねてく。


  呉先輩ってば
  あたしを呼んだのに

  なんで
  ノーマークの玲ちゃんが喋るの?

  邪魔してきて
  ナメないでよ

  チャンスなのに
  むーかーつーくー


そして、ややこしい性格の君が一人でストレスを増やしてくこと数分過ぎちゃった。