おとり化粧室


「はい! 音楽です! ハンドベルするんです! 上手いグループは、一クラス一年の、上手なグループが、一クラス一グループだけ七夕祭りで演奏するんです!」


呉先輩は君に話しかけてきたのに、玲ちゃんがガッツリきやがった。

しかも、漫画の吹き出しで語尾に星マークがついた甘えたボイスを操るため、非常に耳障りだ。


男子の前で態度急変がブリッ子だと信じる子はレトロ過ぎる。

時代は平成、ゆとりちゃん、
女子の前で特に可愛いアタシっぷりを発揮したいところ、

玲ちゃんはひゅったんに媚びる風に呉先輩に愛想を振り撒きやがる。



親友が言葉を噛む様子から分かるように、君を抑えてしゃしゃる理由は、

『コイツをダシに可愛いアタシを売り込まなきゃ〜急げー!!』って計算済みの解釈が妥当だ。


バスケで敵チームが肩から入って邪魔する公式な要領で、自然と自分より一歩先を玲ちゃんに陣取られ、

さっきまでピンクに光ってた君の心は黒モードと切り替わる。


  うぜえ、
  玲ちゃんてば
  呉先輩との出会いを
  横取りする気だ


遠慮してる場合じゃない。
だって、君も我が我がと主張しなきゃ女子高生ウォーズで負けちゃう。

一年の代表、国民的アイドルの座を奪われちゃう。



何か言わなきゃと、口を開きかけた瞬間だった。


「ほんとにぃ、私らも一年の頃したかも」

ぽわんとまるこい呉先輩は、あろうことか君を蹴落とす悪者に話を振っちゃった。


仲良しグループを築いてるのに、どうして君たち女子高生は自分勝手なのかと引いてはいけない。

というのも、学校の国の普通を大人の国の価値観でダメ出しするのは、視野が狭いって逆に引かれるためだ。