おとり化粧室


朝の天気予報で最高気温を目撃し嫌気がさしてるところに、

渡り廊下に映る影の濃度だけで暑さが二倍に感じられ、頭の後ろ辺りに汗が塗られた気分になる。

橋ですれ違う通行人はバスの運転手みたくアイコンタクトをとって目的地へ向かう。



『かぁいいわたしの妹ちゃん』


先輩がベタ誉めする君は、
昨日の今日、今日は注目されるって分かってた。

なんでって、まだ理由が浮かばない者は学校の国に留学すべきだ。
そんなの女子力高いからに決まってる。君は分かってしまってた。


そう、澪碧嶺も玲ちゃんもルルナも分かるしかなかったんだ。


さあ、オシャレ学生やってる場合、体育館や食堂、ちょっとトイレや隣のクラスに行くまで、

たかが数メートルだろうと単品で自分の教室から外に出るのは死滅行為、

『うわ、一人とか友達いないんだ?』
『付き添ってもらえる人望ないんだ……』
『あれ、グループ上手くいってないのかな?』

同級生どもに疑われぬよう誰かしらと並ぶのが常識な訳だが、

もちろん、この感覚を分かってなきゃリアルで馴染めない。


そうなると、
昨日までのふあふあグループは、澪碧嶺と玲ちゃんが先頭で、後ろに君とルルナがペアで歩くのが習慣だったんだけど、

今日の三人は君を隣に飾りたがった。


もちろん、下品にならないよう決して言葉にしないが、暗に君の略奪戦に焦ってるのが伝わってきた。



澪碧嶺に玲ちゃん、ルルナ、この三人娘はどうして君のサイドポジションが欲しいのかな?