おとり化粧室


  っ、なに最悪
  なんで、待って

  ヤダ赤いよあたし


それなりにモテてきてるし男友達だっているし、別に男慣れしてない訳じゃないのに、

ドキドキして死にそうだった。


だって、君を平仮名のツみたいに机にうつ伏せにさせた上に、あくまで文化祭のテンションで矢尾君が乗っかってきたんだ。

こりゃあクラスメートに注目されるのも仕方ない。


  ヤダヤダやめてムリ

  恥ずかしってば
  体温とかやーめーてー

  こんなん罰ゲームだよ

本当に全っ然やらしくないのに、密着されたぐらいで緊張しちゃう自分がバッカみたいで、

『アタシ意識してんじゃないよ、びっくりしただけなんだよ。お願い皆アタシの赤面見ないでください!』って、

あたふた祈るしかできない。



しかも、

「金返さないと君チャン潰すよー、ほら、君チャンもひゅったんに早く抗議しろよ」って、

ノリで体重かけられたり、耳元で喋られたりしたら、そりゃあやっぱり心臓が爆発しちゃう。

理由はイケメンだから。
ただそれだけなのはブラックジョークが過ぎるので省こう。



「矢尾バカ、君チャン苦しいでっしょー」
ひゅったんのツッコミや、

「や、急ぎじゃないから」
遠くで陸空の声がして、

「ひゅったん! 金の切れ目は縁の切れ目だー!」
矢尾君が騒いで、

わちゃわちゃやってるこの光景は、教室の花形グループにしか許されてはいない。


  〜〜っ早く退いて
  イケメンは無理ってば

照れ照れの君も落ち着いてみようか。

二組の権力者である少年少女におもてなしされてる。
ほら、今日は記念日だ。
女子高生が夢見る女子高生に君はどんどん近づいている。