おとり化粧室


一人だけに声が聞こえてる。

『なんか騒がれてるみたいだけど、アタシが何もしないのはアナタのためなんだよ? アナタを想ってそうしてるの。大丈夫だよ』



一人だけに美しいメロディーは聞こえてる。

『だからなんで助けてくれないのってアタシに逆恨みすんぢゃねーよ?! アタシをイジワル女に認定したら承知しないからね?!』


ふわふわっと可愛く脅してくる歌が聞こえてる。




一人だけに聞こえてる。
ちゃんと届いてる。



その声の持ち主を誰も知らないんだけど、
噂によると君の抑揚にとても似てるとかで、

でも、まさか、自分だけはそんな酷い人のはずがないと皆が思ってる。




ちなみに、別のパターン、
日本の国だと主役に選ばれる子、
純粋で素直で一生懸命な子、

『許せない! 性格悪いらしいよって噂を広めるアナタたちの性格が悪いのよ!』の正義の味方モード演説とか、

『っ、ひっく、アタシこんなのやだよぉ、皆と笑って毎日楽しく過ごしたいよぉ、うわーん〜仲良くしよぉよぉおお』の無垢な乙女モード絶叫とか、

そんな台詞が似合う勇者はいやしない。


くどくなるが、学校の国でのまっすぐさはただの空気が読めない痛い子扱いで、

皆が噂を信じてるなら信じない子の方が変で、イイコちゃんぶるとかマヂ性格悪い奴って嫌われるのがオチで、

まあ、なんか、周りのペースに合わせてあげるっていう精神年齢が大人びてるだけなんだ。




悪意に満ちた噂を広めたのは誰かな?
『みんな』って答えるのが、オシャレ好きな女子高生たち皆の流行りらしい。


だから、あの頃、誰発信か謎だが雨季の卒アル写メは出回ってたし、君たちは軽い気持ちでチラ見したし、

無言を貫くも『ふぅん、別にどうでもいいけど高校デビューなんだぁ、別人なんだぁ?』って空気で共感してた。

それで多分よかった。