おとり化粧室


「やばーい可愛い、古いよタピオカとか。君チャンさん天然〜? そいやぁ最近減ってきてるよね、一時期街中タピオカジュースだらけだったのに。

だってもう四年ぐらい前に一生分わたしたち飲んじゃったよねー、メロンパンにたいやきに〜? 次は何?」


イライラが止まらないが、もう子供じゃない。
ため息や舌打ち、無言や真顔は卒業しよう。

花嫁先輩の喋りに対して笑顔のまま一秒間に三回頷く技を、君は身に付けた。



「タピオカとか久々に聞いたし、あの時代は盛り髪ブームだったねえ、君チャンさんタピオカ好きなんだあ?」


  はあー?
  あたし別にタピオカに
  執着ないんですけど

  この暑い中
  無駄に歩きたくないから
  言っただけなんですけど

  あーもうヤダ
  じゃあ缶ジュース買え!
  冷水機ででも飲め!

  つーか、
  だったら一生タピオカ食べんなよ
  リアルに黙れ


文句はグロスで煌めく唇に似合わない。

花嫁先輩と小一時間行動するだけで、君は忍耐強くなったし新技も習得したし、

どんどん女子高生らしく成長してく。



そう、君は大人には難しい思春期で、矛盾する生き物で、

こんなに大嫌いな子と一緒に居る苦行が、後々、自分に還元されるって知ってもいたんだ。

――それはここだけの秘密、
その秘密を今日は放課後の番人が特別に教えてくれるらしい。


でも、君がポッケにしまってるスマホは高校生の第二の命、

君が読んでいるケータイ小説もビッチ臭く毒めいてきているから、

うっかり友達に貸して、『うわぁショック、こんな性格悪い話を読んでるの?』って、引かれないよう注意しよう。



さあ、心の準備はできたかな?