おとり化粧室


「んと……じゃあ、移動しましょっか。ここあたしたちっぽいテイストの服屋さん少ないし」


一応、今日は自分の美的感覚を花嫁先輩に認めてもらうつもりだったのに、

なんだか無理そうな話だった。

そんな心境とのギャップは激しく、柱の鏡に映る二人は正に青春してたりなんかする。


雑誌のページが飛び出てきた駅前街中は、つけまつ毛かマスカラかで迷う典型的な女子高生が、

『アタシは今の時代をキラキラ生きてる』って思える分かりやすいフィールドだ。


たとえば友達と買い物デート中、
いつも靴買う店はだいたい六千九百円が多いんだけど、『コレ良いな』って値札を見たパンプスがよりによって八千九百円で、

『あー、バイト代もうあんまないしなぁ』って困って、

微妙にデザインというか素材というか安っぽいなんかどっか惜しいブランドで似たようなやつを探して、

妥協して四千五百円で買う感じのファッションビルは君たち十代の聖域で、

自分らしさを誇れる格好の場だ。


繁華街に並ぶファッションビルらには、制服がよく似合う。

思春期が相応しい。
ちょびっと背伸びの学生が大人は羨ましい。



そこは、君たち女子高生が一日プラプラ飽きずに居られるよう、

服に靴にアクセサリー、鞄に時計は当たり前、

プリクラに小規模ゲーセンも必須、小腹が空いた用にドーナッツやたこ焼き、軽食完備、

ネイルサロンにヘアサロン、美容が気になる乙女の味方、

香水やら洗顔剤、流行りのグロスやら老舗の頬ブラシ、試供品でメイクアップできちゃうコスメショップなんかも一通り入ってる。


今日も一押しの商品、時間が経つと香りの変わるヘアーコロンが、

通路に向けて、デザイン性豊かに展開されていた。



君と花嫁先輩は、歯切れ悪く地下街へ向かうことにしたので、

甘いお花畑を吹き散らしテスターで遊ぶ中学生の脇を横切ってく。