おとり化粧室


聞いてもないのに彼氏のお喋りばっかりで、冬夜を世界で一番できた男ってテイで一方的に話をすすめ、

基本、聞き手の相槌に中身は求めず自分の恋愛観のみを語りたがる玲ちゃんは、

あまりに女子力高すぎて、君は内心バカにしてきたし、

加えて、いっつもアタシがアタシはアタシのアタシで始まりアタシで終わる独演会、

その周りが見えてないコミュニケーション能力不足加減に引いてきた。




それが何故?


「もー君チャンさん誉めすぎ、恥ずかしいじゃん。てかスカウトねえ……スカウト何回断ったかなぁ、わたし人前苦手なんだよね。

ココだけの話、彼氏以外はちょと昔色々あって人間不信なんだぁ。大分改善されたけどまだ根っこは残ってるかなぁ、へへっ、シリアスぅ〜?」


初対面の信用ならない相手にトラウマ告白する女子らしさ全開、

花嫁先輩の痛さは玲ちゃんそっくりなのに、

どうしてか、受け取り方が変わって、


これが玲ちゃんだった場合、

『はあー? たかが付き合って二ヶ月の彼氏相手に何言ってんの? え、時間の問題じゃない? は、ポエム、やばい女子!!』って、

イジりたくてしょうがないし、

『人間不信とか自分で報告してくれなくて結構。凄いよ、かまってちゃん。自称ナイーブとか女子!!』って、

見下したくてたまらないのに、


皆のアイドル花嫁先輩発信だと、女子パワーはひどく純愛だったし壮大な青春だった。


そう、『アタシもこんな素敵な人生を歩みたい』って、君は久々に女子高生らしい夢を抱けた。



さて、こんなモダンな放課後を滑稽だと叩きたい大人は、もっと童心に染まってみればいい。

広がるリアルを体感すれば、君も花嫁先輩も孫と同様にいとおしいはずだ。