おとり化粧室


毎日がつまらない?
つまらないのはつまらない?

でも、教室に入れば君の周りに親友が三人も居る意味を考えておこうか。


友達がほしくても、イジメられてる子には声をかけてくれる生徒さえ存在しないのに、

今が不満だなんて贅沢じゃないのかな?


君のつまらない毎日、それこそが学生の中では結構な幸せなんじゃないかな。












ううん、そんな仙人みたいなこと理解はできても分からない。

だって、まだ十六歳、制服を着ているんだ。



「澪碧嶺ってファッション系早いよね、玲澪碧嶺から知るもん」

「あ、それかなり分かるー、流行る前に澪碧嶺既に持っちゃってるよねぇ」

玲ちゃんとルルナは澪碧嶺ヨイショに熱心だが、そうなればなる分、君のご機嫌はナナメだった。


本来、評価されるのは君なのに、まったく世の中は犯罪者に甘く、常識人に厳しい。



  玲ちゃんだって
  ネムは
  君チャンのパクリって
  ルルナだって
  言ってたじゃんっ!

  ひゅったんが
  怖いからって
  露骨に寝返んなよ!

  あたしは放置な訳?

澪碧嶺が真似師って攻撃してたあの日々を、二人はたった数週間で忘れちゃったのかな?



  澪碧嶺ばっか過保護で
  あたしばっかストレス。

  もうやだ、マジやだ
  なんか。
  夏休みまで我慢して……


  ……うん。

  夏休みまで我慢して
  夏休み終わったら
  違うグループ移ろっかな

  玲ちゃんもルルナも
  澪碧嶺も
  別に本当は合わないし


  てかパクられんのが無理!!!

苛々しててどうしようもない君は、お化粧直しを口実にトイレへ行こうと決心した時だ、

読者置き去り物語に、ようやく新展開が舞い降りるらしい。






「ここ君チャンさんのクラスだよねえー?」



一年二組に風が吹いた。