おとり化粧室


従って、犬をワンちゃんって呼んだり、パンツをズボンって言ったり、
ランチをお昼って打ったり、私をアタシって名乗ったり、

学校の国でも、とびきり女子力高いふあふあグループは、

今日も違和感なく親睦を深めてる訳だ。



「ねえ、話全然変わるけどー澪碧嶺カラコン変えたよね? その色、肌に馴染むねー良い! 私ってメイク似合わないからね、メイクしないのにカラコンしたら不自然だからねぇ、私カラコンしない派になったの。いーな澪碧嶺は」

「えー、ほんとお? 褒められちゃった! これ新色なんだあ、次もこれにしよーっと。でも通販人気過ぎてもう品切れみたい、在庫入荷待ち」

オシャレなアタシっぷりを発揮ルルナのオシャレ会話は、

流行り歌みたく教室に馴染んでく。



「ルルナはお化粧してないけどさ、澪碧嶺だってスッピンのが可愛いよねー! 化粧水変えた感じ?」

「うん、案外プチプラが優秀なんじゃないかって乳液とか基礎全部七百円のシリーズにしてみたの」

同じく、美容に目がない都会なアタシの本気を出したい玲ちゃんの声は、

スマホみたく皆へ普及してく。



『澪碧嶺可愛い』
『澪碧嶺になりたい』
『澪碧嶺は女子すぎ』
可愛い澪碧嶺は六月も可愛いだけのお姫様だった。



それはアタシがお試しで購入したカラーコンタクトレンズ、

それはアタシがブログで紹介した最近お気に入りの化粧品たち、

『お巡りさん! 窃盗罪で捕まえて!』

そう叫びたい。


  ほら、また澪碧嶺
  パクってんじゃん

  なんで
  あたしの真似ばっか?
  いい加減うざい
  この女、何考えてんの?


今日も君は優しいせいかな、言えない愚痴を抱えてる。



そして、