おとり化粧室


ルルナは言う。


「ただ付き合ってるんじゃなくね、玲ちゃんみたいに成長できる深い純愛したいよねー」


ルルナは偉い。
ルルナは凄い。

「ね、? 君チャン?」


随分と前に、お喋りにつまずいている君を置き去りにせず、

しっかり両手をさしだしてきてくれた。


  ……あー……、

  話聞いてないや
  だってツマンナイし

  ……冬夜とか。
  あたし冬夜君みたいな
  男子力高い奴はイヤ

  フツーに痛いし。
  恥ずかしいし。


でも、親友の彼氏に人として魅力を感じない君は、何と返事をするべきか迷ったし、

そもそも玲ちゃんが誰と交際中だろうがどうでもよすぎるし、

自分以外について考えることさえ面倒臭い。



「私も早く運命と出会わなきゃー」

空気を読むルルナが場を繋いでいる時に、

  あ。

ケータイ小説を読んでいた君は閃く。
集中批難される持論を発見してしまっていた。



それは、
玲ちゃんはDV彼氏と付き合いたがりぃ症候群だっていうたとえ話だ。


喧嘩っぽい冬夜君は、中学時代『オレは女にだけは暴力を振るわねえ』が胸キュン決め台詞だったんだけど、

浮気が発覚した後は『お前を守る以外では誰にも手を出さない』に、少しオトナ進化し、

最近だと『お前のために一人も傷つけない、約束する』で、語録は完成したらしい。



玲ちゃんは大変喜んでいたし、澪碧嶺やルルナも自分のことのように感動しているのを、

確か君は、
アタシ星のお姫様の君は『ハイハイ結構、女子高生の三名様お疲れサマでーす』ってガールズトークに水をさし、白けて見ていた。