おとり化粧室

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「体育だーるいねぇー」

「ほんとー。ウチらもう若くないからヤバイよね〜」

「リアルに疲れるくない?」



体育の授業が終わったら、着替えに時間がかかるから、

皆は早歩きで体育館を出るんだけど、

他校のジャージを着こなす1グループは呑気にお喋りしながら歩いてる。



「あーあ、お化粧落ちるから午前に体育とか地獄でしょ」

「ほんと呪いーテカるー、あぶらとり紙スケルトンだよ〜」

メイク、ネイル、コテ、香水、バイト先、これ関連の単語を発言に挟んだら、

高校生活キラキラ楽しんでますアピールに繋がるせいか、

付けまつ毛のノリは何が良いかと呟きながら、玲ちゃんが後でトイレに寄ろうと誘う。




正直、面倒臭いって思った。


  ……、次の授業
  遅刻したくないんだけどな


勘弁してほしい。
普通に友達だけど、そっちの時間にルーズな価値観に、

いちいちこっちが巻き添え喰らう意味が分からない。


早く行こうよって言いたいけど、言えない。
だって、空気が悪くなるでしょ。

和気あいあいとした今は、シビアに真面目ぶるムードじゃないなって判断はつく。



ただ、友達がそんな心境なんだとかって察することがゆとり世代ってできないらしく、

「そーいや玲ちゃん購買行きたいって言ってたよね〜私も喉カラッカラ」って、

ふざけたことをほざくルルナに舌打ちしたいところなんだけど、

「あたし紅茶にするー」って、ヘラヘラ笑って同調してしまうのが、

この物語の伝説になる設定の主人公の可愛い癖だ。