おとり化粧室


「ううんっ、」


無意識に『ううんっ』て言えたんだから、

親友の悩みを最初に察したルルナ、親友の相談を親身に受ける玲ちゃん、

大変大人な二人に劣らず、

君だって十分大人だ。
どうか自分の人間性に安心してほしい。


「玲ちゃんやルルナが分かってくれてね? あたしほんっっっとーに救われたんだよ?」

昨日ルルナが手を繋いできたのを真似て、

親友公言中の君は立ち止まり、玲ちゃんと無理やり握手をしてみた。


だって、確かに『皆気を付けて! 澪碧嶺にパクられるちゃうよ』って感じの言い出しっぺは君だけど、

その情報を鵜呑みにした人も『澪碧嶺は真似っ子だ〜!』って見なしてるってことで、

つまり、発信者と同罪ですよって、

万が一、二人が澪碧嶺に寝返った未来、自分だけが損をしないよう意識なく計算していたんだ。



これってビッチなのかな?
普通に頭が良いと思わないかな?

世の中、腹黒を責めがちだけど、相手を理解し上手く操るのって高度な技で、

そんな女子高生たちの努力を全否定するのは、あんまりメルヘンじゃない。


たとえば、会ったこともない自称二十四歳女性に貢ぐだけ貢いでブッチされた中年男性が居たとして、

日本の国だと、騙された方が被害者で世間に同情されるらしいけど、

学校の国では、『オッサン可哀想だけど純粋すぎたんだよ、リアルはそんなもんだよ』って結論付けられるのがオチだ。