のたお印の短編集

俊平から見れば、冴子は天を見上げるような存在であり、冴子から見れば俊平は足元の靴の裏側に過ぎない。

本来ならば接点はなく、俊平は冴子に一瞥され、汚らわしく視線を背けられるような立場。

なのに。

「貴方、名前は…?」

ある放課後、頂点と最底辺は出会った。

その日、俊平はクラスの掃除道具入れの中に押し込められ、床を清掃した後のモップで散々突かれ、蹴られた後だった。

埃や靴跡でドロドロに汚れた制服。

男子生徒がよくやるふざけ半分の取っ組み合いにしては、度が過ぎている。

誰が見てもイジメだった。

痛みと疲労で掃除道具入れの中で蹲り、ようやく体力が回復して下校しようと教室から出た直後、俊平は廊下で冴子とバッタリ遭遇したのだ。