「チィッ!」

最後の力を振り絞って後退したウェンディによって、アッパーを回避された。

反撃などしない。

彼女は鮮やか過ぎる引き際で、夏彦一人を残してその場から逃走する。

「……」

仕留め損ねた。

手負いの殺人鬼を逃がしてしまった事に、夏彦は苦渋の表情を浮かべるのだった。